すっぽんと亀の違いを徹底解説!3つの特徴と俗説のウソの検証も!

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「すっぽんと亀って形は似ているけど何が違うの?」
「そもそもすっぽんは亀なの?亀じゃないの?」

など、すっぽんと亀の違いについて気になっている方も多いのではないかと思います。

そこで、この記事ではすっぽんの亀の違いについて、画像を交えつつ、様々な視点から徹底的に解説していきたいと思います。

生物学者が化石からすっぽんだと特定した3つの特徴をわかりやすく解説しつつ、良くある俗説のウソの検証もしますので、これを読めば、すっぽんの亀の違いの正しい知識が身に付きますよ!

そもそもですが、分類学的にすっぽんは亀の一種です


まず、そもそものお話からしたいのですが、分類学的にすっぽんは亀の一種です。いくつかの亀の種類に関して、分類学上どう定義されているのかを見てみましょう。

亀の種類 分類学上の定義
スッポン 爬虫綱カメ目スッポン科キョクトウスッポン属
スッポンモドキ 爬虫綱カメ目スッポンモドキ科スッポンモドキ属
クサガメ(幼体名:ゼニガメ) 爬虫綱カメ目イシガメ科イシガメ属
アカミミガメ(幼体名:ミドリガメ) 爬虫綱カメ目ヌマガメ科アカミミガメ属
アルダブラゾウガメ 爬虫綱カメ目リクガメ科アルダブラゾウガメ属

上記の表を見て分かる通り、どの亀も爬虫綱カメ目までは共通していることがわかりますね。

ちなみに爬虫綱(はちゅうこう)というのはいわゆる爬虫類のことで、カメ目というのがいわゆる我々が亀と呼んでいるものです。カメ目に属しているすっぽんは、亀の一種なのです。

すっぽんと他の亀との違いは何?生物学者がすっぽんの化石の認定に使った3つの特徴とは?

すっぽん
画像
甲羅 骨甲板のみ 骨甲板と角質甲板の二層
皮膚 ウロコで覆われていない ウロコで覆われている
骨のコラーゲン繊維の配列 規則的 規則的でない

すっぽんが亀の一種であることは分類学上の定義から分かりましたが、おそらく多くの方は、すっぽんって名前は亀じゃないし、形もなんか他のよく見る亀とは違うな、と感じていると思うのです。

その違いは何なのか?参考になるのは、上記の表でまとめた生物学者がすっぽんと他の亀を見分けるのに使っている3つの特徴についてです。

実は、世界最古のすっぽんの化石は現在のところ日本の福井県で発見されています。

ところが、出土したカメの化石がすっぽんなのかそうじゃないのかを見極めるのってものすごく大変なんですね。だって、数千年前の化石とか、骨とかも一部しか残っていないですから。

そんな中、日本の生物学者がすっぽんと他の亀を見極めるために、どのような違いに注目したのか、非常に信頼性が高く、参考になる情報なので、ここでご紹介したいと思います。

他の亀と異なるすっぽんの特徴1:甲羅が退化している


すっぽんと他の亀では甲羅の特徴が大きく異なります。他の亀の多くが立派で大きな甲羅を持っているのに対し、すっぽんは、それが本当に甲羅なのかどうかもよくわからないような小さな甲羅しか持っていません

このすっぽんの特徴は甲羅の退縮(たいしゅく、退化して機能が弱くなっていること)と呼ばれています。


こちらが一般的な亀の甲羅。丸々盛り上がっていて、いかにも硬そうですね。それでは他の亀とすっぽんの甲羅の違いを詳しく見ていきますが、その前に甲羅の構造について少し説明をします。

亀の甲羅というのは、通常は骨甲板と角質甲板の二層で作られているんですね。骨甲板というのは甲羅の骨の部分のことで、亀の甲羅というのは背骨にくっついて骨で出来ているんです。


これが一般的な亀の骨の断面図です。亀の背骨に骨でできた甲羅の形のものがくっついているのがわかりますね。

亀にとって甲羅というのは、我々人間のリュックサックのように着脱可能なものではなく、体の一部であり、骨の一部なんです。


でも、我々が普段見る亀の甲羅に骨っぽさはないですよね?それは、骨で作られた甲羅の上に、人で言うと爪に含まれる成分であるケラチンがコーティングされているからなのです。

このタンパク質の一種であるケラチンで作られた甲羅の部分を角質甲板と呼びます。我々から見える亀の甲羅は、この角質甲板の部分になります。


さて、ここからがすっぽんの話ですが、すっぽんにはこの、他の亀の甲羅にはある角質甲板がないんです。

骨甲板はあるから、すっぽんにも甲羅自体はあると言えるのですが、骨甲板も他の亀のように丸々隆起した形の立派なものではなく、ほとんど平面と言えるような小さなものですし、骨甲板の上に被さっているものは角質ではなく、皮膚です。

だからすっぽんの甲羅には硬さがないんですね。

すっぽんは英語でsoft-shelled turtle(柔らかい甲羅の亀)と書きますが、それは甲羅が単に平面状で小さいだけでなく、角質部分のない甲羅しか持っていないからなのです。

これがすっぽんと他の亀の違いで一番象徴的な特徴です。

他の亀と異なるすっぽんの特徴2:皮膚がウロコで覆われていない


すっぽんと他の亀との違いの2つ目は、皮膚がウロコで覆われていないことです。


他の亀の足の皮膚をよく見てみるとわかりますが、上記の画像の通り、タンパク質の一種であるケラチンでできた硬いウロコで覆われていることがわかります。

ところが、すっぽんの足を見てみると、いかにもコラーゲンたっぷりそうな、つるつるした皮膚になっていますよね。すっぽんの皮膚にはウロコがないんです。

他の亀と異なるすっぽんの特徴3:骨のコラーゲン繊維の配列が規則的


(https://academist-cf.com/journal/?p=5905より)
3つ目のすっぽんの他の亀と異なる特徴は、少し専門的になってしまうのですが、福井で発見された亀の化石が、スッポン科のものであると認定した決定打となった特徴です。

それは、骨の中にあるコラーゲン繊維の配列が規則的になっているという特徴です。

これは、甲羅(骨甲板)が皮膚で覆われているなど、すっぽんと特徴が近いスッポンモドキにもない特徴です。

上記の画像がスッポン科の甲羅の骨組織と、スッポンモドキ科の甲羅の骨組織を顕微鏡で比較したものです。

スッポンモドキ科の甲羅は、コラーゲン線維が不規則に配置されているのに対して、スッポン科の甲羅のコラーゲン線維は、ベニヤ板のように繊維が互い違いにきれいな構造上に配置されていることがわかります。

この甲羅の中のコラーゲン線維の配置の規則性が、すっぽんの一番の特徴と言えます。

ちなみにスッポンモドキは水の中だけで生活するため、足に水掻きが付いているので、そこを見れば一般人でも(顕微鏡で見なくても)見分けは付きますが…。

ということで、

  • 甲羅が薄く、皮膚で覆われている
  • 皮膚にウロコが付いていない
  • 甲羅の中のコラーゲン繊維が規則的に配列されている

の3つが、他の亀と異なるすっぽんの特徴の大きな部分と言えます。

すっぽんと他の亀との違いについて、ネット上でよく見られる俗説について検証と解説

その他、ネット上ですっぽんと亀の違いについて書かれている言説で、正しいものと間違っているものがあるので、その辺を細かく検証・解説していこうと思います。

すっぽんは他の亀と食べるものが違う?


他の亀は肉も植物も食べる雑食のものが多いのですが、すっぽんは基本的に肉食です。特にタニシなどの生き餌を好んで食べます。肉食なのはすっぽんの特徴と言えます。

他の亀は足の指が5本あるのにすっぽんの足の指は3本しかない?


(http://kaiteiclub.hatenablog.com/entry/2016/09/26/120000より)
ネット上でよく書かれているすっぽんの足の指の数が3本しかないという説は誤りです。

すっぽんの足の指の数は前足、後足ともに5本づつで他の亀と同じです。足の指の数はすっぽんならではの特徴とは言えません。

わかりやすくそれが示されているのが上記の画像で、すっぽんの骨格標本を作られている方によるものです。

この方のページで、すっぽんの足の指は前、後ともに5本であることが確認できます。

すっぽんは夜行性なの?


すっぽんは夜によく釣れるので夜行性だと考えている方が多いです。

しかし、正確にはすっぽんは夜行性ではなく、臆病すぎて夜しか見つかりにくい、というのが本当のところです。実際飼ってみるとわかりますが、昼でも普通に動きます。

そもそもの話ですが、亀というのは絶対に日光浴が必要な生き物なのです。他の生物にはない大きな甲羅を持っているからですね。

すっぽんも他の亀のような角質で覆われた甲羅はないものの、骨でできた甲羅はありますし、他の生物よりも多くの骨を作る必要があります。

そして、骨を作るには、餌からカルシウムを取るだけではなく、日光浴をして体内でビタミンD3を作ることが作る必要があるのです。

すっぽんを含む亀の飼い方で、必ず日光浴について触れられているのはそのためです。

すっぽんは他の亀よりも臆病なの?


性格が特に臆病なのはすっぽんの特徴と言えます。

というのも、他の亀は身を守るだけの大きくて硬い甲羅を背中に持っていますが、すっぽんには柔らかい甲羅しかなく、他の亀よりも外敵に遭遇した場合の危険性が高いからです。

なので、昼間は砂の中に潜っていることが多く、なかなか見つけることができません。

また、一度食いついたら離さないと言われているすっぽんの噛み付き癖も、その臆病な性格から来ているものです。

すっぽんは他の亀よりも寿命が長いの?


すっぽんの寿命に関しては、30年と書いている人もいれば、100年と書いている人もいるなど、様々な意見が入り乱れています。

実は、海外文献を含めて信頼できるソースが非常に少なく、すっぽんに限らず他の亀に関しても平均寿命というのはよくわかっていません

その理由ですが、亀はそもそも寿命が長い生物なので、生まれてから死ぬまでを研究対象とすることが難しいのです。

特定の一個体が何歳まで生きた、というものはあるのですが、人間の平均寿命のようなものを出すにはたくさんの個体を生まれてから死ぬまで調査しなければならないので、難易度が高いわけです。

さらにすっぽんに関しては、養殖のものは途中で食べられる前提のものなので、他の亀と比較してもなおさら寿命がわかりにくい状況なのです。

ただ、今あるデータからすっぽんの寿命を推測したい、という方もいらっしゃると思いますので、ある程度信頼のできるソースから、亀の寿命に関する記載をご紹介し、すっぽんの寿命の推測に役立つヒントをここでは提供したいと思います。

How long do they live?
Estimated longevity in spiny softshell turtles is up to fifty years in a large female. (Conant and Collins, 1998; Harding, 1997)

BioKIDS – Kids’ Inquiry of Diverse Species, Apalone spinifera, Gulf Coast Spiny Softshell: INFORMATION
海外文献ですが、アメリカに生息するトゲスッポン(爬虫綱カメ目スッポン科アメリカスッポン属)の寿命に関しては、50年以上あると、ミシガン大学の研究によって推定がされています。

日本で食べられるすっぽんはスッポン科キョクトウスッポン属のものなので、近い種の情報ではあります。

 2016年1月には、ベトナムで飼育されていた100歳近くの個体が死んだ。これにより、いま生存が確認されているシャンハイハナスッポンは先に挙げた3匹だけになった。(参考記事:「絶滅寸前、キタシロサイが残りあと3頭に」)

 シャンハイハナスッポンはレッドリバー・タートル(紅河のカメ)とも呼ばれ、淡水のカメとしては世界で最も大きい。100年近い寿命を持ち、体重は90キロ近くにもなる。(参考記事:「スッポンは口から“排尿”する」)

絶滅寸前のスッポン、繁殖可能なオスはどこに? | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
シャンハイハナスッポン(カメ目スッポン科ハナスッポン属)という絶滅危惧種のすっぽんで100歳近い個体がいたという事例。

ただ、このスッポンに関しても、引用元のサイトの画像を見ていただけるとわかるとおり、かなり巨大な種となっており、我々の多くがすっぽんと聞いてイメージするスッポン科キョクトウスッポン属のものとは異なっています。

Q カメは万年も生きる?
A 1万年は大げさですが、カメは長生きします。
野外での生態的研究から、イシガメにもヤエヤマイシガメにも、50歳を超えて生存する個体がいることが分かっています。クサガメでは45歳になるまで飼育された例があります。国外のカメではカロリナハコガメが138年間、ヨーロッパヌマガメが120年以上生きた例があります。これらのカメは体重が1kg前後です。小型であるにもかかわらず、人間なみの寿命を持つわけです。
ワニガメやカミツキガメのように体重が10kgを越えるカメは、おそらく100歳を超えることができるでしょう。
そして体重が200kgを越えるゾウガメでは、すでに成体になっていたときから152年間も飼育されたセイシェルゾウガメ「マリオン」や170年以上も飼育されたガラパゴスゾウガメ「ハリエット」が知られており、200年以上生きることができるかも知れません。

【配布資料】カメの暮らしをのぞいてみよう – 日本自然保護協会
この日本自然保護協会を始め、複数のソースからの情報で共通しているのは、亀の中で最も長生きなのはゾウガメで200歳以上生きることも可能ということです。

ウミガメも長生きで、70年~80年は生きると言われています。いずれも大型の亀の事例であることから、大型の亀ほど長生きする傾向があると考えられているようです。

カメは長寿(ちょうじゅ)の象ちょうとされていますが、「万年」は生きません。しかし、動物の中ではとても長生きで、ペットとして飼われることがある『アカミミガメ(ミドリガメ)』の寿命(じゅみょう)は、40年以上です。また、私たちのみぢかな川や池にすんでいる『クサガメ』の寿命は、60年以上です。
そのほか、『アメリカハコガメ』は100歳以上で、ワニガメは150歳以上です。

カメの寿命と体のしくみ – 学習 – Yahoo!きっず
こちらの記載でもやはり、ミドリガメよりも大きいクサガメの方が長寿命で、大型のワニガメなどはさらに長寿命になる傾向が見られます。

ウミガメの飼育を担当していると、「ウミガメの寿命は何年ですか?」という質問をよく受けます。答えは「謎」です。未だその寿命は明らかにされていないのです!

今、えのすい暮らしが最も長いウミガメはアオウミガメのレッドとエルで1968年にえのすいにやってきました。水族館暮らし46年の超ベテランです。しかし、えのすいにやってきた時の年齢は定かではありません。46+α年です。
去年死亡した飼育下世界最高齢のアオウミガメのジャンボは57年水族館で暮らしていました。搬入時すでに大人の大きさであったので、少なくとも19年以上でえのすいにやってきたと考えています(ジャンボがやってきたインド洋では大人になるまでに19年はかかると言われています)。つまり少なくとも76歳以上は生きたのではないかと推測されます。

2014/09/15 亀は万年? | 新江ノ島水族館
水族館のウミガメ担当の飼育担当の方でもウミガメの寿命は把握されていないということで、亀の寿命に関する研究は(あまりに長すぎる故)進んでいないことがここからもわかります。

特定のウミガメが70年以上生きた、みたいな事例はあっても、平均的にどれくらい生きるのかはわからない、ということです。

今まで出てきた情報を亀の甲長順に整理してまとめると下記のようになります。

亀の種類 最大甲長(cm) 寿命
カロリナハコガメ 21.6 130年以上
ヨーロッパヌマガメ 23 120年以上
アカミミガメ 28 40年以上
クサガメ 30 60年以上
スッポン 38.5 不明
トゲスッポン 54 50年以上
ワニガメ 80 100年以上
シャンハイハナスッポン 104 100年以上
アルダブラゾウガメ 138 200年以上
アオウミガメ 140 80年以上

以上の大きさと寿命の関係を踏まえると、すっぽんの寿命は40年~100年の間になりそうな感じはします。

ですが、小型の亀でも長く生きる事例もあり、また全般的に◯年以上、というようなざっくりした記載も多いため、はっきりした答えは出せない、というのが結論になります。

まとめ

すっぽんと亀の違いに関して、ネット上では俗説のようなものも出回っていたため、それらの検証もしつつ、極力正確性を担保した形でまとめてみましたがいかがでしたでしょうか?

結論としてはやはり、

  • 甲羅が薄く、皮膚で覆われている
  • 皮膚にウロコが付いていない
  • 甲羅の中のコラーゲン繊維が規則的に配列されている

の3点が、すっぽんと他の多くの亀との違いであって、他の俗説的なものは決定的なものとは言えない、というのが検証の結果です。

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