妊娠期の葉酸不足で胎児に障害が出る可能性が高いって本当でしょうか?
厚生労働省でも妊娠前の女性や妊婦さんには葉酸摂取が推奨されているだけに気になります。
実際に、妊娠を計画している妊娠前の女性、妊婦さんの葉酸の摂取不足で、お腹の胎児やママ自身の体にはどんな影響が出るのでしょうか?
こちらの記事では
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- 妊娠前・妊娠中の葉酸不足で胎児に起こりうる影響や障害について
- 妊活女性・妊婦さんの葉酸不足で母体に起こりうる影響や症状
- 妊活・妊娠期にはどのくらいの葉酸量を摂取すべきか
- 葉酸を効率的に摂取する方法
についてまとめます。
妊活中の妊娠前の葉酸の不足、妊婦さんの葉酸不足について気になる方はぜひ参考になさってください。
目次
妊娠前・妊婦の葉酸不足で胎児に起こりうる影響や障害
妊娠前・妊婦さんの葉酸不足で胎児に障害が出る可能性が高いというのは本当でしょうか?
この答えはYES!です。実際は、胎児に障害が出る原因=葉酸不足 という単純なものではありません。
胎児に先天性異常などの障害が出る原因については、遺伝、染色体異常、環境、などさまざまな要因が言われますが、現在のところ明確な原因は分かっていません。
しかし、妊娠前・妊娠初期の十分な葉酸摂取が、胎児に障害が出る確率を下げることができるということは明らかになっています。
では、妊娠前・妊婦のときに葉酸不足だと胎児にどんな障害や影響が起こりえるのでしょうか?
妊娠初期(妊娠1~4ヵ月)に胎児に出る障害としてあげられるのが神経管閉鎖障害です。
胎児の神経管閉鎖障害(二分脊椎症・無脳症)
妊娠初期(妊娠1~4ヵ月)に胎児に出る主な障害に神経管閉鎖障害があります。
- 神経管閉鎖障害
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- 妊娠3~5週の時期に胎児の脳や脊髄の機能に異常をきたす病気
- 二分脊椎症(にぶんせきついしょう)・・・・神経管の下部がうまくふさがらない
- 無脳症(むのうしょう)・・・・神経管の上部に閉塞障害が起こる
- 神経管は脳や脊髄のもとになるもので、その核を作る葉酸とビタミンB12が十分に体内にあることで防ぐことができるといわれている
神経管閉鎖障害は大きく2のつ症状「二分脊椎症」と「無脳症」で発症することが分かっています。それぞれ少し説明しますね。
二分脊椎症
神経管閉鎖障害の1つは、二分脊椎症です。現在、日本での二分脊椎症の発症率は10000人に5.46人の発症率とも言われています。
妊娠3週頃に神経管の下部がうまく形成されない事が原因の一つと言われています。
- 二分脊椎症(にぶんせきついしょう)の特徴
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- 脊椎の一部が開いたままになり、本来は脊椎の中で守られるはずの脊髄が外に飛び出してしまう症状
- 脊髄の損傷があるので胎児のどこかに神経障害が残る
- 神経障害の例
運動障害・・・足がうまく動かせず歩きにくい
感覚障害・・・痛みや熱さが感じにくい
排泄障害・・・・おしっこやうんちが上手に出せなく、我慢もできない - 二分脊椎症は2種類・・・・開放性二分脊椎症・潜在性二分脊椎症
- 顕在性二分脊椎症・・・・脊椎から飛び出した脊髄が、体の表面にこぶのように現れた状態で生まれる
- 潜在性二分脊椎症1・・・・腰の部分に毛が多い、背中に脂肪種や皮膚のへこみが特徴。ただ、エコーなどで見た感じ分かりにくくMRI検査しないと分からない
- 潜在性二分脊椎症2・・・・幼児期は症状がみられず、大人や思春期になって尿漏れ、転びやすいなど神経の症状が出てくる
二分脊椎症は脊髄の損傷なので、神経からくる機能に影響がでます。また、二分脊髄症の方の約80%が水頭症などの合併症を併発します。
水頭症は、脳室が正常より大きくなる病気で、脳脊髄液による脳の圧迫で脳機能に影響がでます。
二分脊椎症になると、脊髄などの神経障害と脳機能の影響などが出ることからできることなら予防しておきたい胎児の障害です。
無脳症(むのうしょう)
神経管閉鎖障害のもう1つは、無脳症です。現在、日本での無脳症の発症率は10000人に1.34人と言われています。
妊娠3週~4週頃に神経管の上部がうまく形成されない事が原因の一つと言われ、医者が唯一中絶をすすめる症例です。
- 無脳症の特徴
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- 神経管の形成が途中で止まって脳が作られないため、頭蓋と大脳がない状態が症状
- エコー(超音波検査)によって妊娠6週頃から疑いがみられ、14週ごろに診断がはっきりする
- 脳以外の臓器には特に異常はみられない
- 出産しても死産の可能性が75%
- 脳がないため成長しても生きていけないので中絶されるケースも少なくない
無脳症は脳がないため自力で生きていくことが難しいのが特徴です。
そのため、中絶されるケースも多く、死産とわかりつつも出産しお葬式をして別れを告げるといった発症が切ない結果につながることが多いのでできれば避けたい障害です。
妊活・妊娠期の葉酸不足で母体に起こりうる影響や症状
葉酸不足で胎児には先天性異常の発症リスクが高まるということが分かりましたが、母体であるママになるあなた自身への影響はどうなのでしょうか?
葉酸が不足することでの母体への影響をまとめると、
- 葉酸が不足することでの母体への影響
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- 葉酸欠乏症貧血の恐れ
- 口内炎
- 子宮粘膜の力の低下
- 吹き出物など肌荒れ
などがあります。
妊娠を計画していて妊娠前の女性、妊婦さんにとって避けたいのが、葉酸欠乏症貧血になることです。
貧血になることで早産および分娩後の母体感染のリスクが上昇します。
葉酸欠乏症貧血でも医師への受診が望ましいですが、さらに深刻化し、巨赤芽球性貧血になってしまうと一定期間の治療が必要になってきます。
治療が必要になるほど、葉酸やビタミンB12が不足しているのは胎児の脳や障害への影響もかなり心配になりますし、何より安心した妊娠生活を送るのが難しくなります。
また、葉酸不足になることで赤血球の新陳代謝が鈍くなるので、体中の粘膜の力が落ちてしまいます。
粘膜の力が落ちることで、子宮粘膜の力も低下するので、妊活中であれば着床しにくいなどの弊害にもつながります。
葉酸不足!日本の神経管閉塞障害の発生率は低下していない
妊娠前3か月と妊娠初期の十分な葉酸な摂取が神経管閉塞障害の発症リスクを50%~75%さげるということは明らかになっています。
しかし、残念ながら日本では葉酸摂取が神経管閉塞障害の発生率を低下させたという結果にはつながっていません。
我が国の妊娠女性の葉酸サプリメントの接種率は10%~20%にとどまり、神経管閉鎖障害の発生率は低下していません。
2017年という比較的、近年の発表なのでかなり現実味のある数字ですね。
日本でも2000年に厚生労働省から妊娠の可能性がある女性に対して、葉酸摂取に関する通知が出されているのにです。
神経管閉鎖障害のリスク低減のために妊娠の可能性がある女性は通常の食事からの葉酸摂取に加えて、いわゆる栄養補助食品から1日400μgの葉酸を摂取する
実際にTwitterなどでも無脳症と診断された方をみかけます。
- 無脳症なんだとか…昨日正式に決定されるみたいやったけど。死亡届とかも出さなあかんし辛いね。出来る前から葉酸摂って節制されてたからビックリやわ。。
- えっと、俺らの子供が
無脳症と言う病気になって
しまいました。
会った時には、
動いてなかったけど
世界一可愛いいし
世界一愛してます。
色んな意味を込めて
照、しょうって名前にしました。もう見る事も、触れる事も
できひんけど一生愛してます。皆も、子供大事にしてあげて
日本では神経管閉塞障害の発症リスク減少がまだあまりはっきりとみられていません。
しかし、世界各国で、妊娠前3か月と妊婦のサプリメント利用などによる葉酸摂取が推奨され、結果として、神経管閉鎖障害の発症リスクは大幅に減少したという結果が得られています。
お腹の中で育つ赤ちゃんのためにも、妊活中、妊娠中には葉酸不足にならないように十分に注意するにこしたことはありません。
なので、胎児のためにも、ママ自身のためにも妊娠前3か月、妊娠初期の葉酸摂取は積極的に行っていきましょう。
葉酸不足予防には妊娠前のいつからどのくらいの葉酸量を摂取すべきか?
神経管閉鎖障害のリスクを低減するために、またママの母体に影響がでないようにするためには、妊娠前や妊娠中に葉酸が不足しないためにはいつからどのくらいの葉酸を摂取したらよいのでしょう?
- 妊娠を考えている女性が葉酸不足になるのを避けたい時期
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- 妊娠を考えた時点すぐから
- 妊娠する前3か月~妊娠初期4ヵ月の間は必須
- 【理由】胎児の神経管が作られる時期が妊娠1か月~4か月なので
妊娠を考えている妊活女性、妊婦さんが最も葉酸不足を避けたい時期は、胎児の神経管が作られる妊娠1か月~4か月です。
この時期は、胎児の細胞分裂がさかんな時期で、脳や脊髄のもとになる神経管は葉酸とビタミンB12によってその核である核酸を作り出します。
核酸は細胞の核にあたり、遺伝情報を保有しており、遺伝情報にそって体をつくるよう指令を出す生命の根幹です。
妊娠前のこの時期だけは胎児のためにも葉酸が不足しないように十分な量の葉酸を摂取しましょう。
妊娠前・妊娠中に不足しない葉酸量とはどのくらい?
では、妊娠前・妊娠中に不足しない葉酸量とはどのくらいでしょうか?
厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2015 年版)に水溶性ビタミンである葉酸についての記述で葉酸の摂取量の基準が明示されています。
- 妊娠前・妊娠期の厚生労働省の推奨葉酸量
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- 15~17(歳) 1日450μg+400㎍のモノグルタミン酸型葉酸
- 18~70(歳) 1日440㎍+400㎍のモノグルタミン酸型葉酸
厚生労働省の推奨葉酸量はほとんどの人が充足している量のことを指します。
妊娠前・妊娠期の葉酸量の特徴は、神経管閉鎖障害のリスク低減のために、付加量でモノグルタミン酸型葉酸400㎍の摂取が推奨されている点です。
先にも出てきましたが、日本でまだ未達であり、世界各国で神経管閉鎖障害のリスク低減に成果をあげているのはこのモノグルタミン酸型葉酸400㎍の付加量の摂取です。
モノグルタミン酸型葉酸は、食事性葉酸に対して合成葉酸とよばれます。サプリメントに含まれる葉酸の型です。
このモノグルタミン酸型葉酸は吸収率が80%で、摂取することで高い確率で体内に残らせることができます。対して食事性葉酸の吸収率は50%程度です。
葉酸は水溶性ビタミンで水に溶けやすく、体内で使用されなかった葉酸は残念ながら尿や汗として体外に排出されてしまいます。
しかし葉酸は体内では作り出すことができないので外から摂取する必要があるというやっかいな栄養素です。
そのため、毎日コツコツ、その日必要な葉酸を補う必要があります。
妊娠前・妊婦さんのベストな葉酸の摂り方は?
では、妊娠前3ヵ月~妊娠4か月までの大事な時期には、実際にどのように葉酸を摂取するのが効率もよいのでしょうか?
一番望ましいベストな葉酸摂取の仕方は、
- 妊娠前3か月~妊娠初期のベストな葉酸摂取の方法
- 「食事」+「サプリメント」で葉酸摂取量をカバーする
ときどき、妊娠前3ヵ月~妊娠4か月までの期間は葉酸サプリメントさえ飲んでおけば大丈夫!と耳にするかもしれませんがそれは間違いです。
- 妊娠期の葉酸摂取についての間違った認識
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- ×葉酸サプリメントさえ飲んでおけば大丈夫!
- ×妊娠してから葉酸サプリを飲めばよい
- ×葉酸はまとめて摂取しても蓄積できるから大丈夫
これらの認識はたまに信頼ある先輩ママさんなどから耳にするかもしれませんが間違った情報です。
先にみたとおり、神経管が作られるこの時期は付加量でサプリメントのモノグルタミン酸型葉酸400㎍が必要なのです。
付加量にプラスして、食事からも積極的に1日450㎍の葉酸量を摂取する必要があります。
このへんの勘違いがまだ日本では多く、正確な葉酸量を把握していないために日本では神経管閉鎖障害の発生率は低下の結果につながっていないのかもしれません。
また、神経管閉鎖障害のリスクを低減するためには、妊娠する前からの葉酸摂取が必要です。妊娠を考えた時点で葉酸を摂取しましょう。
そして、葉酸は水溶性ビタミンで蓄積ができない栄養素です。毎日コツコツと摂取する必要があることも頭にいれておきましょう。
あなたにいまこの記事に目を通して頂けてよかったです!
正確な葉酸量を把握して、しっかりと大切な神経管が作られる時期に葉酸不足にならない対策をとっていきましょう。
具体的に葉酸サプリをどのように選んだらよいか迷う場合はこちらの記事が参考になります。
妊娠前・妊娠初期の葉酸不足は胎児の神経管閉塞障害という重大な障害につながる恐れがあることが分かりましたね。
そして残念なことに、日本では神経管閉塞障害のリスクの低減率をあげるほどまでは、葉酸不足の解消がうまくいっていないことも事実としてお伝えしました。
胎児に無脳症や二分脊椎といった障害がみられて悲しい思いをするのはできるだけ避けたい!と親になる女性なら皆思うことだと思います。
正しい葉酸不足解消のための葉酸摂取量もこちらで明示してあります。ぜひ参考になさって葉酸不足にならないような日々を送っていただけたらと思います。